【結果】
1,各尺度の因子構造および信頼性
その後の大半の分析において女子のみを分析対象にすることを考慮し、
因子分析も対象を男女にした場合と女子のみにした場合とに分けて行った。
@やせ願望尺度
男女を分析対象にした場合
Table1(ここをクリックして下さい)に示すように、
1因子構造となり、『やせについての意識』
と命名した。一方女子のみを分析対象にした場合は、
Table2に示すように、『やせへのこだわり』
(認知面におけるやせ願望)と『ダイエット行動』(やせ願望が行動面に現れているもの)という2因子構造になった。
Aべき思考尺度
どちらの場合も
Table3,4に示すように、『自己期待』「(自己の能力や行為に対する高い期待)
・『無力感』(自分の情緒や外部の影響に対する無力感の正当性)・
『協調主義』(全体の幸福があって初めて個人の幸福があるという考え方)
の3因子構造となった。
B社会的期待受容尺度
どちらの場合も
Table5,6に示すように、『美への期待』(女性が美しくあることへの期待)
・『容姿偏重』(女性の価値は外見にあるという極端な考え方)の2因子構造となった。
C自己評価尺度
どちらの場合も
Table7,8に示すように、『自己防衛』(他者から見られる自己に関するもの)・
『自尊感情』 (自分自身を基本的に価値あるものとする感情)の2因子構造となった。
2,女子における各因子間の関連性
仮説@を検証するために、また、他の各因子間同士の関連性も調べるために、
女子のみを対象にして行った因子分析によって得られた各因子間の相関係数
(ピアソンの積率相関係数)を求めた。
(1)やせ願望尺度とべき思考尺度
やせ願望尺度と
、べき思考尺度の各因子得点間の相関係数を求めたところ、
Table9(ここをクリックして下さい)に示すように、
「やせへのこだわり」得点と「自己期待」
得点との間にのみ有意な相関がみられた(r = .168, p <.05)。
しかし、その相関係数はほとんど無相関に近い、極めて低い値であった。
(2)やせ願望尺度と社会的期待受容尺度
やせ願望尺度と、社会的期待受容尺度の各因子得点間の相関係数を求めたところ、
Table10
に示すように「やせへのこだわり」得点と、「美への期待」得点との間
に弱い相関がみられた(r = .217, p <.01)。
(3)やせ願望尺度と自己評価尺度
やせ願望尺度と、自己評価尺度の各因子得点間の相関係数を求めたところ、
Table11
に示すように「やせへのこだわり」得点と、「自己防衛」得点との間
に弱い相関がみられた(r = .290, p<.01)。また、「やせへのこだわり」
と「自尊感情」との間にも有意な負の相関(r = −.183, p <.05)がみられたが、
その相関係数の値はほとんど無相関に近い、極めて低い値であった。
(4)べき思考尺度と社会的期待受容尺度
べき思考尺度と、社会的期待受容尺度の各因子得点間の相関係数を求めたところ、
Table12
に示すように「自己期待」得点と「美への期待」得点の間に弱い相関
がみられた(r = .206, p <.05)。
(5)べき思考尺度と自己評価尺度
べき思考尺度と、自己評価尺度の因子得点間の相関係数を求めたところ
、
Table13
に示すように「自己期待」得点と「自己防衛」得点との間に中
程度の相関がみられた(r = .409 p <.01)。また、「無力感」得点と
「自己防衛」得点に弱い相関(r = .318, p <.01)が、「無力感」得点と
「自尊感情」得点との間に弱い負の相関(r = −.340, p <.01)がみられた。
さらに、「協調主義」得点と「自己防衛」得点との間に弱い相関(r = .270, p <.01)が、
「協調主義」得点と「自尊感情」得点との間に弱い負の相関が
(r = −.247, p <.01)がみられた。
(6)社会的期待受容尺度と自己評価尺度
社会的期待受容尺度と、自己評価尺度の因子得点間の相関係数を求めたところ、
Table14
に示すように「美への期待」得点と「自己防衛」得点との間に弱い相関
がみられた(r = .269, p <.01)。
3,女子におけるやせ願望得点HL群感の各因子得点の比較
やせ願望尺度全項目の平均得点(やせ願望得点とする)が高い上位1/4の者をH群、
低い下位1/4の者をL群として、他の3つの尺度を従属変数にした一要因(2水準)
の分散分析を行った。その結果、べき思考尺度の「自己期待」得点(F(1,72)=4.822 p<.05)
と、自己評価尺度の「自己防衛」得点(F(1,68)=8.105 p<.01)において群の効果が有意であり、
やせ願望得点の高い者の方が低い者よりも高い得点を示した。
4,女子におけるやせ願望下位尺度得点において
他の2変数を2要因とした分散分析
(1)「やせへのこだわり」得点を従属変数にして
「美への期待」得点と「自己期待」得点について、得点の高い上位1/3の者をH群、
得点の低い下位1/3の者をL群として、「やせへのこだわり」得点を従属変数とした
2×2の分散分析を行った。その結果
Fig.1
に示すように交互作用が有意であった
(F(1,63)= 14.205, p <.001)。
次に「美への期待」得点と「自己防衛」得点を2要因として同様に2×2の分散分析
を行った。その結果
Fig.2
に示すように
交互作用が有意であった(F(1,65)= 5.628, p <.05)。
(2)「ダイエット行動」得点を従属変数にして
次に「ダイエット行動」得点を従属変数にして、「美への期待」得点と
「自己期待」得点を2要因とした分散分析を行った。その結果、
Fig.3に示すよう
に交互作用が有意であった(F(1,63)= 6.027, p <.05)。
「美への期待」得点と「自己防衛」得点を2要因として同様に2×2の分散分析
を行った結果、
Fig.4
に示すように交互作用が有意であった(F(1,65)= 4.666, p <.05)。
5,男子と女子における各因子得点の比較
性別を独立変数、各因子得点を従属変数とした分散分析を行った。
その結果、「やせについての意識」得点F(1, 257)= 142.001, p <.0001)、
「無力感」得点(F(1, 255)= 8.428, p <.01)、「美への期待」得点
(F(1, 257)= 8.325 p <.01)、「自己防衛」得点(F(1, 256)= 19.284, p <.001)
において女子の方が男子よりも有意に得点が高かった。また「自尊感情」
得点については男子の方が女子よりも有意に得点が高かった(F(1, 256)= 4.725, p <.05) 。
6,「やせるとどんな良いことがあると思うか」 男女
別にみた回答結果
男子33人、女子108人からの回答があった(自由記述)が、女子においてだけ、
「自信をもてるようになる」や「劣等感がなくなる」などといった回答がみられた。
→回答結果はこちら