佐野文香の卒論
問題意識と目的
- 気分調整という機能
本研究で注目する機能は“気分調整”という機能です。(これが先ほどの3つの機能に含まれるかは分かりません)
気分調整とはその名の通り,自伝的記憶を想起することで気分を変化させるというものです。
ここで変化の対象となる気分はネガティブなものだけでなく,私たちはポジティブな気分を鎮める,といった気分調整も行っていると言われています。
しかし,とりあえず本研究ではより分かりやすく,ネガティブな気分を緩和するという機能を見ていきたいと思います。
- どんな自伝的記憶ならよいのか?
しかしこれは,とりあえず自伝的記憶を想起さえすれば気分が改善されるだろう,という単純な話ではありません。
どんな自伝的記憶がネガティブ気分を緩和するのかについて,以下のような性質が考えられてきました。
@ポジティブな記憶:人はネガティブ気分の時にポジティブな記憶を想起する傾向がある。
A重要な記憶 :人によっては(抑うつ傾向の高い人など)ポジティブな記憶より個人にとって重要な記憶を想起する方が効果的である。
B詳細な記憶 :抑うつ傾向の高い人は詳細な記憶を想起できず,過度に抽象化された記憶しか想起できない。この現象は“記憶の概括化”と呼ばれており,これが抑うつ,すなわちネガティブな気分に関連している可能性がある。