佐野文香の卒論
問題意識と目的
あと2点ほど,考慮しておくべきことがあります。
- 自伝的記憶と性差
近年の研究では,自伝的記憶の諸側面において性差がみられることが明らかになっています。
例えば,女性は男性より感情的な記憶を想起しやすく,詳細な記憶を想起しやすい。
逆にいえば男性は女性より感情的な記憶を想起できず,抽象的な記憶を想起する傾向にある。
また全般的な自伝的記憶成績において女性の優位性が認められるという結果も報告されています。
このような性差をふまえると,本研究の目的である“自伝的記憶想起と気分調整”の関連にも性差が表れることは十分に考えられます。
- 感情の多様性
感情研究では頻繁に触れられていることで,感情を多面的にとらえていく必要性を考慮しなければなりません。
感情はポジティブかネガティブかという基準で二分することはできないものであり,その感情独特のメカニズムを持っています。
このことはすなわち,あるネガティブな気分が自伝的記憶想起によって改善されたとしても,他のネガティブな気分が同様に改善されるとは限らないという事を意味します。
気分をポジティブ/ネガティブかで区別するのではなく,複数の気分を別個に検討していく必要があります。