問題と目的
方法
結果
考察
引用文献
要旨
本研究では、説得的コミュニケーションの観点から、「送り手の要因」「メッセージの要因」「受け手の要因」の3点による説得の効果の検証をおこなった。
「送り手の要因」には専門性を、「メッセージの要因」には論拠の質を、「受け手の要因」にはジェンダーパーソナリティー及び外向性をそれぞれ設定した。
説得の効果は、実験前後の態度変容量で測っており、また説得者に対する印象や意見に対する評価が態度変容に至るまでの媒介変数であるとしてそれらを分析で扱った。
専門(高・低)と論拠(強・弱)の計4つの条件ごとに、ジェンダーパーソナリティー及び外向性と説得者に対する印象や意見に対する評価、態度変容量との因果関係を検証した。
専門高・論拠強条件においては、男性性から意見に対する評価と態度変容量に負の影響が見られた。これは男性性が高い者ほど、説得者から態度を変容させようという圧力を感じ、抵抗が生まれたためだと考えられる。
専門高・論拠弱条件においては、女性性から説得者に対する印象や意見に対する評価に正の影響が見られた。女性性が高い者ほど、説得者が専門性の高い人物であるという理由で、その意見も好ましいものであると評価するという、短絡的な判断をしたのであろう。
また同条件において、外向性から説得者に対する印象や意見に対する評価、態度変容量に負の影響が見られた。専門性の高い人物がもっともらしくない内容の説得をしていることを、外向性が高い者は説得者の信頼性を低めるものとし、このような結果になったと思われる。
専門低・論拠強条件においてはこれらのような結果は得られなかった。専門低・論拠弱条件において、男性性から説得者に対する印象に正の影響が見られた。この条件では圧力を感じることがなく、男性性が高い者ほど説得者に対する印象が良くなったのであろう。
以上より、男性性が高い者に対しては説得の圧力を感じさせないようにすることで、女性性が高い者に対しては説得者が信頼できる者であることを提示することで、外向性が高い者に対しては説得者の信頼性が疑われないようなメッセージを提示することで、それぞれ説得の効果を高めることが示唆された。
今後の課題として、説得の過程を含めた詳細な検証や専門性の操作方法など実験デザインの見直しがあげられる。