W、総合考察
本研究の研究Tでは、苦手である・気をつかってしまう・うまくつきあえない・つきあいにくいなどと思う相手とのつきあい意識の変化を見るための尺度「つきあい意識尺度」を作成した。因子分析の結果、「円滑な意志疎通」「関係作りへの努力」「無理のない関わり」「自己肯定」の4つの因子を抽出した。
そして研究Uでは、SFAの技法をもとにして「うまくやっているところ」を引き出し、「課題」を与えるものを実験プログラムA、「うまくやっているところ」を引き出すのみ行うものを実験プログラムBとした2種類の実験プログラムを作成し、実験前と実験後の変化をみることで実験の効果を検証した。
大学生にこの「つきあい意識向上プログラム」を行ったところ、課題のある実験群Aと課題のない実験群Bに有意な差があまり見られなかったのは、課題があまり大学生に影響を与えなかったといえる。また、実験群Aと実験群Bの変化は、「円滑な意志疎通」では有意な差が見られたが、「つきあい意識」・「無理のない関わり」・「自己肯定」では有意な差は見られなかったもののわずかながら上昇していた。しかし、「無理のない関わり」・「自己肯定」では統制群Cも上昇していた。これは、大学生が普段あまり対人関係を意識していなかったが、今回の調査の機会があったことから、自分と選んだ相手との関係を見直すことができたからなのではないだろうか。実験後、被験者の大学生に書いてもらった感想の中には、「このアンケートによって友人関係が見直すことができた」「改めて振り返ってみると、自分から仲よくしようとする余地がある」「このアンケートをやって、実はその相手と結構仲が良いことがわかった」などというものがあったことからもいえる。
スケール値群別において、「つきあい意識」・「円滑な意志疎通」・「自己肯定」の事前テストの各平均が低い方からLow群・Middle群・High群という順になっているのは、スケール値が低い大学生ほどつきあい意識の得点が低いといえる。そして、「円滑な意志疎通」とスケール値において、Low群とMiddle群が上昇しているのに対してHigh群のみが下降しているのは、得点がはじめから高いため、上がりにくいからだろう。
また、スケール値の変化について、仮説2は支持された。つまり、選んだ相手との関係があまり良くないと考えている大学生ほど、つきあい意識やスケール値が上がりやすいといえる。
本実験プログラムは、普段あまり友人関係を深く意識しない大学生が自分の友人関係を振り返る機会ができたということに大きな意義があったのではないか。また、選んだ相手との関係があまり良くないと考えている大学生にこそ効果があるのではないかと考える。