結果


結果

  <目次>
    1.RSM尺度の因子分析
    2.相関係数
    3.仮説1の検討
    4.仮説2の検討
    5.仮説3の検討
    6.仮説4の検討



     RSM尺度の因子分析

 日本語版RSM尺度13項目に対して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。固有値1を基準として2因子を抽出した。累積寄与率は49.17%であった。第1因子は、「相手の表出行動に敏感で、洞察能力に富む傾向」にあることから、先行研究に従い「他者行動敏感能力」因子、第2因子は、「自己呈示や表出行動を統制し修正する能力」にあることから、先行研究に従い「自己呈示変容能力」因子と命名した。


     相関係数

 RSMと拒否不安との間には、r=.24(p<.01)の正の相関が見られた。また、自己呈示変容能力と拒否不安の間には、r= .20(p<.01)の正の相関が見られ、他者行動敏感能力と拒否不安との間には、r=.14(p<.05)の正の相関が見られた。また、自己呈示変容能力と他者行動敏感能力との間には、r=.50(p<.01)の正の相関が見られた。

   
    仮説1の検討

  RSMの高群と低群に対し、現実条件における外見―内面の魅力選択の関連を見た。結果に基づき、χ2検定を行ったところ、有意差はなかった(χ2(1,226)=0.28)。男女別の魅力選択についても検討を行った。男性における結果に基づきχ2検定を行ったところ、有意差はなかった。(χ2(1,226)=0.41)。女性における結果に基づきχ2検定を行ったところ、有意差はなかった(χ2(1,226)=0.26)。

  より詳細な分析を行うために魅力選択を独立変数に、そして、RSM下位因子の自己呈示変容能力と他者行動敏感能力のそれぞれの得点を従属変数にした1要因の分散分析を行った。現実条件においては、自己呈示変容能力得点(F(1,224)= 8.23,p<.01)で内面重視より、外見重視の方が高い有意な差があった。 次に、理想条件においても同様の分散分析を行った。理想条件においては、自己呈示変容能力(F(1,224)= 6.56, p<.05)、そして他者行動敏感能力(F(1,224)=6.78,p<.01)両群において内面重視より、外見重視の方が高い有意な差があった。

     仮説2の検討

 RSMと拒否不安との間には上記のとおり、弱い正の相関が見られた。また、RSMの下位因子と拒否不安との間にも同様の正の相関が見られた。RSM能力、自己呈示変容能力、そして他者行動敏感能力が高いと拒否不安も高くなることが明らかになった。次に、自己呈示変容能力および他者行動敏感能力の高低を明確にするために平均値からの上位得点を高群、下位得点を低群としそれぞれの値を独立変数、拒否不安得点を従属変数にし、2要因の分散分析を行った。自己呈示変容能力(F(1,222)=3.20)、他者行動敏感能力(F(1,222)=0.55)共に主効果は見られなかった。交互作用(F(1,222)=1.24)についても有意な差は見られなかった。結果が得られなかったので、自己呈示変容能力と他者行動敏感能力それぞれを平均値±1/2SDを基準として高群、中群、低群に分類し、それぞれの能力を独立変数、拒否不安得点を従属変数にし、1要因の分散分析を行った。他者行動敏感能力については主効果(F(2,223)=0.29)が得られなかった。自己呈示変容能力については主効果(F(2,223)=5.56,p<.01)が得られた。自己呈示変容能力については有意差が見られたため、多重比較(TukeyのHSD法)を行った結果、低群と高群(低<高)、中群と高群(中<高)の間に有意な差が見られた。以上の結果から、自己呈示変容能力が高い人は拒否不安が高いことが分かった。


     仮説3の検討

 次に、RSMを多面的に分類するためにRSMを自己呈示変容能力と他者行動敏感能力の下位2因子に分類し、平均値からの上位得点を高群、下位得点を低群とし、それぞれの高低群を作った。現実場面と理想場面において魅力重視に差があるのかを調べるために高低×高低の計4分類を作成し、それぞれの群に対し現実条件と理想条件における魅力選択のクロス表の作成を行った。自己呈示変容能力低群―他者行動敏感能力低群内において、χ2検定を行ったところ、有意であった(χ2(1,226)=5.77, p<0.5)。現実条件では、魅力選択において内面を重視する者が有意に多く、理想条件では、外見を重視する者が有意に多かった。自己呈示変容能力高群―他者行動敏感能力低群内において、χ2検定を行ったところ、有意であった(χ2(1,226)= 4.01, p<0.5)。現実条件では、魅力選択において内面を重視する者が有意に多かった。また、理想条件では、魅力選択において外見を重視する者が有意に多かった。自己呈示変容能力低群―他者行動敏感能力高群内において、χ2検定を行ったところ、有意であった(χ2(1,226)= 10.97, p<0.1)。現実場条件では、魅力選択において内面を重視する者が有意に多かった。また、理想条件では、魅力選択において外見を重視する者が有意に多かった。自己呈示変容能力高群―他者行動敏感能力高群内において、χ2検定を行ったところ、有意であった(χ2(1,226)= 14.61,p<0.1)。現実条件では、魅力選択において内面を重視する者が有意に多かった。また、理想条件では、魅力選択において外見を重視する者が有意に多かった。現実条件では内面重視、理想条件では外見重視という魅力選択がすべての群で同様の結果となった。この結果より、現実と理想といった条件の変化により他者への魅力選択に変化が生じることが明らかになった。次に、仮説3の後半の検討のために、他者行動敏感能力の高群と低群における現実、理想条件での魅力選択の結果に対しχ2検定を行った。他者行動敏感能力高群においてはχ2検定の結果、有意であり(χ2(1,226)= 25.26,p<0.1)、現実条件では内面を重視、理想条件では外見の重視が有意に多かった。他者行動敏感能力低群においてはχ2検定の結果、有意であり(χ2(1,226)= 9.62,p<0.1)、現実条件では内面を重視、理想条件では外見の重視が有意に多かった。


     仮説4の検討

 RSM下位因子(自己呈示変容能力―他者行動敏感能力)と現実条件における魅力選択について、分析を行うためにクロス表の作成を行った。また、同時に拒否不安得点の高低における魅力選択の差を明らかにするために拒否不安の高低によるクロス表も作成した。自己呈示変容能力高低群での現実条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意差はなかった(χ2(1,226)=0.40)。また、他者行動敏感能力高低群での現実条件における魅力選択に関してもχ2検定を行ったところ、有意差はなかった(χ2(1,226)=0.05)。これらの結果より、現実条件において、自己呈示変容能力・他者行動敏感能力因子ごとでの得点の高低での度数の偏りはみられなかった。拒否不安高低群での現実条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意差があった(χ2(1,226)= 3.95, p<.05)。結果より、拒否不安低群は、内面を重視し、拒否不安高群は外見を重視することが有意に多かった。次に、同じ現実場面において「拒否不安」の高低が影響を及ぼしているのかを検討するために、RSM下位因子(自己呈示変容能力―他者行動敏感能力)と拒否不安尺度の高低による群別での現実条件における魅力選択のクロス表の作成を行った。自己呈示変容能力低群×拒否不安高低での現実条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意な差がみられた(χ2(1,226)= 4.87, p<0.5)。自己呈示変容能力低群内において、拒否不安低群の内面重視と拒否不安高群の外見重視が有意に多かった。自己呈示変容能力高群×拒否不安高低での現実条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったが、有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 0.27)。他者行動敏感能力低群×拒否不安高低での現実条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意な差がみられた(χ2(1,226)= 3.85,p<0.5)。他者行動敏感能力低群において、拒否不安低群の内面重視と拒否不安高群の外見重視が有意に多かった。また、他者行動敏感能力高群×拒否不安高低での現実条件における魅力選択に関して、χ2検定を行ったが、有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 0.72)。また、このRSM両下位因子の高群での結果は、RSM両下位因子(自己呈示変容能力―他者行動敏感能力)の高群と拒否不安高低において交互作用がみられ、RSM両下位因子(自己呈示変容能力―他者行動敏感能力)の低群でみられた「拒否不安低群と内面重視、拒否不安高群と外見重視の有意に多かった」という関係性がみられなくなった結果となった。他者行動敏感能力だけ注目してみると、他者行動敏感能力低群内での拒否不安低群は、有意に内面重視を取っていたが、他者行動敏感能力高群内での拒否不安低群では、有意差が消失した。つまり、他者行動敏感能力の高さが拒否不安の低群において外見重視を増加させたと解釈ができる。これまでは、RSM各2因子高低群と拒否不安の高低群内における、現実場面設定での魅力重視について分析した。次に、特性として持つ「拒否不安」欲求の高低が、場面設定で変化が起こるのかを確認するために、理想条件における魅力選択についてのクロス表を作成した。自己呈示変容能力低群×拒否不安高低での理想条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 1.03)。また、自己呈示変容能力高群×拒否不安高低での理想条件における魅力選択に関してもχ2検定を行ったが、有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 0.20)。他者行動敏感能力低群×拒否不安高低での理想条件における魅力選択に関してχ2検定を行ったところ、有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 0.94)。また、他者行動敏感能力高群×拒否不安高低での理想条件における魅力選択に関してもχ2検定を行ったが有意な差はみられなかった(χ2(1,226)= 0.20)。この結果から、現実条件において、RSM下位因子高群にみられた拒否不安高低における有意差が、理想条件においてはみられなくなった。

 因果関係の構築を図るため重回帰分析を行った。条件設定として現実条件と理想条件の2つを用意した。なお、現実条件、理想条件における魅力重視の回答の質的変数に関しては、0と1のダミー変数に変換して重回帰分析を行った。結果から、拒否不安は、RSM両下位因子に有意な正の影響を及ぼしていた。そして、自己呈示変容能力は現実場面での魅力選択に有意な影響を及ぼしており、外見重視に正の影響を及ぼしていた。他者行動敏感能力は理想場面での魅力選択に有意な影響を及ぼしており、外見重視に正の影響を及ぼしていた。