サークル活動とアルバイトにおける対人葛藤方略の選択
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目的と仮説
 







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1.本研究の目的
2.仮説

1.本研究の目的

対人葛藤は,大学生が所属するサークルやアルバイトといった集団においても,日常的に経験されるものである.葛藤状況において,好ましい葛藤解決方略を選択することは,当該の集団や類似の集団でうまく活動し,集団での活動を維持していくために重要であると考える.そこで本研究では,サークル集団とアルバイト集団の上下関係的人間関係(先輩後輩,上司部下)において生じる対人葛藤において,大学生がどのような葛藤解決方略を選択するのかについて,加藤(2003)の2次元5スタイルの葛藤方略スタイルの立場から検証する.


 サークル集団の先輩後輩関係やアルバイト集団の上司部下関係のもつ機能は,それぞれの集団に特有なものであり,友人関係の機能とは異なる機能がみられると考えられる.また,先輩や上司との間に生じる対人葛藤は,友人関係との間に生じる対人葛藤と異なる性質をもつと考えられる.これらのことから,本研究では研究対象を上下関係的人間関係,特に,自分よりも地位が上位の者に対して葛藤方略を行使する場面に限定した.


 そして,サークル集団やアルバイト集団の集団特性の違いに着目し,それらが葛藤解決方略スタイルの選択に及ぼす影響を検討する.サークル活動とアルバイトは大学生の行う課外活動として共通する部分も見られるが,それらが果たす役割としては異なる部分もあるはずである.共通する点として,例えば,個人の意志決定によって選択的に行われる活動であることや,集団の中で他者との関わりを持ちながら活動すること,目的を共有しているという点などが挙げられる.一方,異なる点としては,サークル集団は主に学生同士の集団であるのに対して,アルバイト集団は年齢的にも立場的にも成員間に幅があることが考えられる.また,活動を行う目的や動機の違い,それに伴って活動に対する取り組みの姿勢が異なることが考えられる.アルバイトをする動機として,収入を得ることが大きなウェイトを占めていることは様々な調査で明らかになっており(楠見・滝川
,2002),友人を得ることなどや活動自体の魅力を参加動機としているサークル(田中,1993)とは活動への取り組みの姿勢が異なることが予想される.

 

大坊(2003)・・・保守的な心理傾向は,コミュニケーションの仕方についての臨機応変さ,それぞれの状況や他者に合わせた柔軟さを欠きがちになると述べている.保守的な心理傾向とは,狭い行動範囲でステレオタイプ的な行動をしようとする傾向のことであり,人は基本的に保守的な心理傾向を示すという.

 

葛藤状況では,その状況や葛藤相手の意向を適切に判断し,有効と思われる葛藤方略を選択する必要があるから,多様な状況に対応できる素地を養うことは葛藤解決に有用であろう.このことから,1つの課外活動集団に所属しているよりも,複数の集団に所属しているほうが,より解決に有効な葛藤方略を選択するのではないかと考える.

 

以上より,本研究の目的を簡潔にまとめると3つとなる.

 

☆サークル集団やアルバイトの集団の上位者に対して,大学生が普段どのような行動をし,その上位者との葛藤時には,どのような葛藤方略を選択するのかを明らかにする.

 

☆サークル集団やアルバイト集団の集団特性,あるいはそれらの活動への取り組みの姿勢の違いが,集団の上位者に対する普段の態度や働きかけ方と関連があるかを明らかにする.

 

☆課外活動に複数所属し活動している経験が,集団での普段の行動や葛藤方略の選択と関連があるかを明らかにする.

 

2.仮説

これら3つの目的から,本研究の仮説を以下の3点に設定した.

 

仮説1 サークル集団とアルバイト集団とでは,集団内の上位者に対する普段の態度や働きかけに異なる特徴があるだろう.

 

仮説2 サークル集団とアルバイト集団の両方に所属している者と,サークル集団またはアルバイト集団の一方のみに所属している者とでは,集団内の上位者に対する普段の態度や働きかけに異なる特徴があるだろう.

 

仮説3 集団内の上位者に対する普段の態度や働きかけの特徴は,その上位者との葛藤時に選択する解決方略と関連があるだろう.