2.遊びの種類

 幼児の遊びは観点を変えることによって様々な分類が存在する。深谷(1990)は「遊び」を大きく分けて「外遊び」と「内遊び(室内遊び)」の2つに分類した(図3)。

図3
 遊びの中で児童は本来能動的であり、直接体験なかで育っていくものである。好奇心を持ち、発見や創造の楽しみに取り組んで遊ぶのが児童の遊びの特徴である(深谷, 1990)。
 鈴木(1985)は遊び相手との関係という観点から遊びを、母親等(保育者を含む)との遊び、ひとり遊び、集団遊びの三つに大別した。それぞれの遊びについて以下のように説明している。
 母親等との遊びは、特に乳児及び低年齢幼児にとって不可欠な遊びである。肌のふれ合いによる遊び、言葉を媒介としての遊び、母親等のまねをする遊び等、子どもに対する愛情をこめてなされる遊びは、子どもの心身の発達に重要な意味を持っている。
 ひとり遊びは、(1)目的・目標の選択が自由である、(2)内容や時間に束縛されない、(3)結果については、自己評価の範囲で満足感を得ることができる、等の意義がある。集団遊びになれば、ひとり遊びに見られるような自由性は拘束されるものの、母親等との遊びやひとり遊びにみられないような意義がみられる。例えば、(1)友だちと遊ぶ楽しさを知る、(2)遊びが発展し、長時間になることが多く、それだけ効果が期待できる、(3)遊びにルールのあることを理解し、ルールを守ることの大切さを身につけることができる、(4)集団遊びには、遊びによって役割のあることを知り、それによって生ずる責任を果すことの意義を理解する、(5)協力の大切さを知る、(6)自己主張の通らない場のあることを知ると同時に、他人の主張に耳を傾けることの必要性がわかり、そのような態度をとろうとする、(7)話し合う場の必要性を知り、それに参加するようになる、(8)自己統制力を身につけるようになる、等がそれである。



3.遊びの発達

 遊びは実に多岐多様な行動なので定義するのはなかなか難しいが、@自由で自発的に行われ、Aおもしろさ、楽しさを追求し、喜びの感情を伴い、B自分から積極的に関与し、C遊ぶことそれ自体が目的であるような活動であるといえる(鹿蔦, 1991)。仕事のように義務や責任を伴う活動であったり、その活動を通して何かを作ったり、他人の役に立ったりなど、何らかの価値を生み出すこと自体を目的とする活動ではない(高坂・小芝, 1999)。
 幼児期の仲間関係の発達という側面から遊びの分類を最初に報告したのはParten(1932)である。Partenは仲間との遊びを@何もしていない状態、A傍観者的行動、Bひとり遊び、C平行遊び、D連合遊び、E協同遊びの6つの段階に区分した。何もしていない状態とは、はっきりとした遊びがなく身体をいじったりうろうろしている状態である。傍観者的行動とは、他児の遊びを眺めているだけで自分は遊んでいない状態である。ひとり遊びとは、おもちゃや遊具でひとりで遊んでいる状態である。平行遊びとは、他児のそばで同じような活動をして遊んでいるが、子どもどうしの間に遊びのイメージの共有はない。連合遊びは、互いのイメージが共有されて同じテーマで遊ぶ状態である。ただしはっきりとしたルールや役割分担はなく、比較的緩い集団遊びといえる。これに対して協同遊びは、明確なテーマがあり、遊びのなかでのルールや役割分担がはっきりとしている。Partenの遊びの研究は、その後"ひとり遊びは本当に未熟な活動なのか"という点で多くの研究者によって批判されてきた。
 発達的にみると、2,3歳ではひとり遊びや傍観的行動、平行遊びが多くみられ、4,5歳になると連合遊びや協同遊びが多くみられるようになる。互いのイメージを共有し合って、遊びを発展させながらごっこ遊びや制作遊びに取り組むことが幼児期の発達課題であるといえよう。
 また、対人遊びの成立には、相手の行為の模倣が媒介的に働いていることが、明らかにされている。1~3歳の間に仲間遊びが増加すると、それとともに相互に同じ遊具を使うこと(同調行動)も増加してゆく。しかし、3歳以降は言語的直接交渉に置き代わることも示されている。つまり、3歳を境として、友達関係の深化とともに、相互の「かけ声」の介入など、言語モードでの同調に移行していく(Eckerman et al,;内田・無藤, 1983)、ことが明らかになっている。



4.遊びが「幼児の発達」に与える影響

 先行研究により、遊びは幼児の発達に大きく影響していることが分かっている。鈴木(1985)は、「幼児の遊びは、大人の遊びと異なり幼児の心や身体の発達を促すための活動であり、幼児の成長にとって大きな意義を有する活動である。幼児は日常生活の中で本能的にそのような意義を持つ遊びを見つけ、自発的・積極的に取り組んでいる。」と述べている。また神沢(1960)は、ソープの「遊びの価値」についての理論を取り上げ、遊びには、「身体的な面」「教育的な面」「社会的な面」「パーソナリティーをつくることに関係している面」「治療的な面」の5つの重要な側面があることを述べながら、遊びが幼児の身体をはじめ、社会性や人格などさまざまな発達にとって必要であることを示唆している。これまでの研究では大きく分けて、運動能力の向上・心理的発達への影響の2 つの面について検討されてきた。

4-1.運動能力への影響

 幼児の遊びは、身体の諸器官の働きを活発にすることはもとより、巧緻性・平衡性・敏捷性等幼児期に伸ばす必要があるといわれている身体の動きをうまくまとめていく力、つまり調整力を伸ばすという大切な意義を持っている。例えば、歩き始めた幼児は目まぐるしい程に歩き回り(自発的使用の原理)、また積み木を積むことに興味を持った時は積んではこわす活動を何度となく繰り返している。歩くことは、まだ活動の十分でない心臓の働きを相補的に補っており、積み木遊びは、物の量や質を感覚的に得ると同時に、積み木をつかんでは積むという巧緻性を伸ばす働きに関係がある。また、簡易歩道等少し高い所があればそこに上りバランスをとりながら渡って行き、歩道の敷石ではケンパーをして飛びはねて行く。前者は平衡感覚を伸ばし、後者は敏捷性をも育てる活動である(鈴木, 1985)。

4-2.心理的発達への影響

 遊びは日々の生活をより豊かにするものであり、ことに幼児・学童期の子どもにとっては、単に身体発達の促進という側面にとどまらず、社会性や創造性の発達にとってもかけがえのない活動といえる(森・岸本・栗原・廣瀬・北川, 2002)。つまり、幼児期・児童期の子どもたちは遊びを通じて、身体能力および社会性などの内面についても成長しているということが言える。