方法



1.実験計画
 描画対象に対する教示と年齢の2要因配置計画で、教示は描画を他者に見せる条件(以下、注視条件)と、描画を誰にも見せない(以下、非注視条件)の2水準、年齢は年中児・年長児の2水準であった。教示・年齢とも個人間の要因であった。
 
2.対象児
 対象児は幼稚園の園児、合計81名。対象児を年齢別に2群に分けた。さらに、各年齢群を教示別に2群に分けた。対象児の抽出は幼稚園側にまかせた。条件の分け方は、各年齢群とも実験日の早い対象児を非注視条件、遅い対象児を注視条件とした。このような分け方にした理由は、先に注視条件で実験を終えた幼児が、これから非注視条件で実験を行う幼児に対し他者に描画を見られたことを伝え、非注視条件の幼児に対する教示の信憑性を失う可能性を考えたからであった。各条件の対象児の詳細は、次の通りであった。
 @年中児群
年中・注視条件:4歳11ヶ月から5歳7ヶ月までの園児、21名(男児8名、女児13名、平均年齢5歳3ヶ月)
年中・非注視条件:4歳9ヶ月から5歳6ヶ月までの園児、20名(男児13名、女児7名、平均年齢5歳1ヶ月)
 A年長児群
年長・注視条件:5歳8ヶ月から6歳6ヶ月までの園児、20名(男児11名、女児9名、平均年齢6歳1ヶ月)
年長・非注視条件:5歳8ヶ月から6歳7ヶ月までの園児、20名(男児10名、女児10名、平均年齢6歳2ヶ月)
 
3.実験場所
 幼稚園のホールまたはプレイルーム。
 
4.実験材料
描画対象 
 紙粘土製で、底面にアンパンマンのぬいぐるみが付いた取っ手付きコップ。肌色で着色した。コップは実験者が作成したもので、フレーベル館アンパンマンミニ手踊り人形の顔部分のみを貼り付け使用した。コップ本体の高さは90mm、直径80mm、アンパンマンのぬいぐるみの高さは45mm、直径75mmであった。 
描画材料
 八つ切り画用紙、黒色クレヨン。
鍵のかかる箱、袋(非注視条件のみで使用)。
 
5.手続き
 実験は個別で行われ、実験時間は一人5〜10分程度であった。課題を行う際、実験者の右側の机に対象児が座り、左側の机に描画対象を子どもの目線に合うように配置した。
教示方法が条件により異なるため、条件別にその手続きを述べる。
5−1)注視条件
 取っ手が見えるように配置したコップを机上へ呈示し、「これは何でしょう」と尋ね、描画対象がコップであることの言語確認を行った。そして実験者がコップを持ち上げ、対象児の目の前へ呈示し、描画対象の底面・側面とも隈なく確認できるように、2回転させよく見せた。その後、対象児からコップの取っ手が見えないように配置し、「これを○○ちゃん(対象児)から見える通りに描いて下さい。描いた絵は後から私がよく見ます。○○ちゃんは描いた絵について後から私にいろいろ教えてね。描き終わったらできたと教えて下さい。では、頑張って見える通りに描いて下さい。」と教示した。教示後実験者は対象児に背を向け座りなおし、描いているところを見ないようにした。対象児の「できた」という合図を受けてから対象児の方へと座りなおし、描画を確認した。
5−2)非注視条件
 最初に「この箱は鍵を閉めたら開かなくなってしまう箱です。」と、鍵のかかる箱の説明をした。次に、取っ手が見えるように配置したコップを机上へ呈示し、「これは何でしょう」と尋ね、描画対象がコップであることの言語確認を行った。そして実験者がコップを持ち上げ、対象児の目の前へ呈示し、描画対象の底面・側面とも隈なく確認できるように、2回転させよく見せた。その後、対象児からコップの取っ手が見えないように配置し、「これを○○ちゃんから見える通りに描いて下さい。描いた絵は誰も見ません。描いているところも誰も見ません。描き終わった絵は箱に入れて鍵をかけるので誰も見れません。描き終わったら誰にも見られないように袋に入れて、隠したらできたと教えて下さい。では、頑張って見える通りに描いて下さい。」と教示した。教示後実験者は対象児に背を向け座りなおし、描いているところを見ないようにした。対象児の「できた」という合図を受け、描画を袋の中にしまったかどうか尋ね、しまったことが確認できたら対象児の方へと座りなおした。そして対象児の目の前で実験者が袋に入った描画を箱の中にしまった。鍵のかかる箱はアルミニウムで作られており、実験者の見ていない時に対象児が一人で扱うと、安全面で問題が起きる可能性が考えられたため、実験者が扱った。
 どちらの条件も、椅子の足下に黒い足形を配置し、そこに足を置いて座るよう促した。それでも対象児が席を立ってコップを見ようとしたり、コップに触ろうとした場合には、「これには触らないでね」、あるいは「席からは動かないで描いてね」、といった教示を与えた。また、対象児に「わからない」、「描けない」といった反応が見られた場合には、「○○ちゃんの見える通りに描けばいいんだよ」と言って、描画反応を促した。3分経過しても描画が完成しない場合には、「頑張って後ちょっとで描こうね」といって、完成を促した。
 さらに、描画終了後、両条件共に@何を描いたのか、Aどうしてそれを描いたのか、Bコップが変であったことに気付いていたか、の3点を質問した。Bコップが変であったことに気付いていたかの質問は、描画対象であるコップを対象児の目の前で2回転させよく見せた時に、底面のアンパンマンを見落としていなかったことを確認するために行った。また最後に、コップの底面についているアンパンマンを示し、「このキャラクターの名前を知っていますか」と尋ねた。アンパンマンというキャラクターを知らなかったために描画することができなかったという可能性を除去するため、確認を行った。
 
6.記録方法
 対象児の言語反応等は実験者がチェックシートにその場で記録した。
 



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