6.保育者の必要性

 乳幼児期の発達については、鯨岡・鯨岡(2002)は、子ども一人だけで成長するものではなく、周囲の大人の思いに依存していることを示し、子どもと大人の主観的な関係を含んだ「育てる―育てられる」という関係の中で育まれていることを明らかにした。そして、子どもが周囲の人たちの関係の中で発達することを「関係発達」と概念化した。乳幼児期の発達において、大人との関係が大切であることがわかる。保育現場において、幼児と共に生活をしているのが保育者であるが、その役割の重要性も注目されている。遠藤(1998)は、保育者は園生活を共に展開する中で幼児とかかわりをもち、そのなかで一人一人の幼児の思いを受け止め、尊重しながら、援助する必要がある、と述べている。幼稚園教育指導資料第4集では、保育者の新しい専門性として一人一人の幼児の内面を理解し、信頼関係を築きながら、発達に必要な経験を幼児自らが獲得していけるように援助していくことが明示された。また、小林(1998)は他者に関心を示してはいるものの周囲をうろうろするだけで結局仲間に入ることのできない子どもには、保育者からの何らかの援助が必要になるだろう、と述べている。幼児同士のやりとりを考える上で保育者の役割も考慮することが必要であろう。
 柴崎(1992)によれば、保育者の援助には大きく分類して、1.受容的にかかわる、2.共感的にかかわる、3.志向的にかかわる、の3つがあるといわれている。この表(表3)は柴崎正行(1992年)『幼児の発達理解と援助』、柴崎正行(1994年)『保育方法の探求』を参考にしながら遠藤(1998)が作成したものである。

表3

 大人が複数の子どもの遊びに参加(Intervention)することで、集団遊びが成立していく様子を分析した上山・飯塚・鈴木(1984)は、大人の働きかけを伝達―反復<子どもの言葉や行動を全体に伝えたり描写する。>、拡大<子どもの提起に続いて遊び内容を付け加える>、提起<連続した遊びの流れの中で、新たなエピソードを出す>の3つに分けた。4回連続の観察をし、大人の拡大・提起という働きかけが集団遊びの継続に役立ち、その後子どもたちだけの場面でも提起が増えたという結果を報告した。

7.本研究の目的


 以上のことから本研究では、攻撃的でもなく言葉が自発的に出ているにも関わらず、遊びへの仲間入り場面において上手く仲間入りできない幼児に着目し、このような幼児の特徴と仲間入り方略について再検討することを目的とする。さらに、ひとり遊びから仲間との遊びへと変容する時期における保育者のかかわりの重要性について検討することを目的とする。